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宇野功芳氏(1930-2016)は、日本のクラシック音楽の評論家でした。

宇野氏は評論家生活を60年以上に渡って活動されていました。

その批評は歯に衣着せぬもので、時には痛快で、時にはむかつき、時には感動し、笑ったり涙したものです。

僕は、中学生の時から宇野氏の評論に触れ、レコードを選ぶ際は、必ず宇野氏の評論を参考にしたものです。

宇野功芳が選ぶ ベートーヴェン交響曲第5番「運命」の名盤

宇野功芳 ベートヴェン交響曲第5番 おすすめ

今日から、宇野功芳さんが選んだベートーヴェンの交響曲の推薦盤をチェックしてきます。
参照した著書は、次の3冊です。

「僕の選んだベートーヴェンの名盤」1982年4月
「交響曲の名曲・名盤」1991年12月
「ベートーヴェン 不滅の音楽を聴く」2013年7月

この三冊をチェックして、私なり順位を付けたのが以下になります。
順位を決めるに当たり3冊の中で準推薦以上であること。その回数などから選定した結果です。
三冊とも準推薦以上だったのは、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの1947年5月27日のライブ録音でしたが、「ベートーヴェン 不滅の音楽を聴く」で、2日前の5月25日の録音がより鮮明な音質でaudite盤をトップに持て来ているので5月27日盤を外して参考盤という扱いにし、5月25日盤をトップにしました。

第2位は、カルロス・クライバーとクレンペラーの1959年スタジオ録音で、3冊とも取り上げられ、その内2回準推薦以上。

第3位は、2冊に準推薦以上で取り上げられた3つの録音です。


第1位:フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1947年5月25日)

フルトヴェングラー / コンプリートRIASレコーディングス

Auditeから正規盤として出た1947年5月25日盤はとび抜けてすばらしい。高音がややきついが、歪みのまったくないのが何よりも良い。鑑賞用としても十分である。
演奏はすばらしい筈だ。裁判で無罪になり、3年ぶりにベルリンの聴衆の前に姿を現したフルトヴェングラー。しかも4日間行われたコンサートの初日である。さすがのベルリン・フィルも、先に演奏された『田園』ではやや硬くなっていたが、『第5』はまさに一期一会、音楽がたった今生まれていく。大芸術家の真価がマイクロフォンに伝わるわけはないが、それでも演奏の気迫が制約を打ち破っているのではあるまいか。僕はそう信じたい。(「ベートーヴェン不滅の音楽を聴く」2013年より)

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第2位:カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィル

ベートーヴェン 交響曲第5番≪運命≫・第7番 カルロス・クライバー

カルロス・クライバーは現役指揮者の最高峰であり、この「第五」は速いテンポで一気に運んだ若武者の快演だ。金管とティンパニの強奏強打、思い切ったアクセントの気持ちよさ、まことに爽快である。(「交響曲の名曲・名盤」1991年より)

筆者注:カルロス・クライバー(1930-2004)は既に故人で、いまこの文章を読むと隔世の感があります。ただ、この文章が載っている本が出版されたのが1991年で、この「第五」が録音されたのが1974年3~4月ということを考えれば、「若武者の快演」という表現も辛うじてOKかなと思います。

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第2位:クレンペラー指揮フィルハーモニア管

ベートーヴェン:交響曲 第5番 「運命」 「シュテファン王」序曲 オットー・クレンペラー

フルトヴェングラーとは正反対のゆとりのある名演で、テンポは全曲を通じてかなり遅く、しかもほとんど動きを見せない。落ち着きはらった風格は絶品であるが、そのなかにいっぱいの魂の燃焼があり、重量感に富み、スケールも大きい。細部な緻密なニュアンスはフルトヴェングラーには見られないところといえよう。(「交響曲の名曲・名盤」1991年より)

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第3位:トスカニーニ指揮NBC交響楽団(1939年盤)

ベートーヴェン・フェスティヴァル 1939 アルトゥーロ・トスカニーニ  NBC交響楽団

フルトヴェングラーに匹敵する桁はずれの情熱を持ちながら、それを人間業を超えた強い意志の力で鍛えに鍛え、一分の隙もない形式美の中に封じ込めたのがこの演奏なのだ。

それにしても何という結晶化した迫力であろう。ここにはヨーロッパの伝統、ドイツ風の含み、暗さなどは皆無で、すべてむき出しの音だけで勝負している。(「ぼくの選んだベートーヴェンの名盤」1982年より)

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第3位:ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1974年盤)

ムラヴィンスキー・エラート録音集 エフゲニー・ムラヴィンスキー

彼は速いテンポでストレートに、率直に、真摯に、厳しく、素朴に進めていく。ぜい肉を取り、虚飾を排し、音楽の核のみを重視する。したがって表面は枯れていても芯は実に強靭で、少しも力んでいないのに最高の緊張力を保ち、これほど魂の孤独なたたかいを感じさせる演奏も少ないのではあるまいか。(「交響曲の名曲・名盤」1991年より)

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第3位:ブーレーズ指揮ニュー・フィルハーモニア管

ブーレーズの「第五」は理性的ではあるが、それを内部から支える男性的な迫力に満ち、強靭なリズムを深く刻み、音を厳しく積み重ねてゆく立体感がすばらしい。スケールも雄大だし、形も美しい。(「ベートーヴェン不滅の音楽を聴く」2013年より)

ただ、残念ながら現在入荷困難の録音です。
筆者はLPで所有しています。僕がクラシックを聴き始めた70年代初頭に第3楽章のリピートをするということで、話題になった録音です。
個人的には大好きな演奏で、早く復刻をしてほしいです。

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以下次点:

カイルベルト指揮ハンブルク国立響

ベートーヴェン: 交響曲選集, 序曲集<タワーレコード限定> ヨーゼフ・カイルベルト 、 バンベルク交響楽団 、 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団 、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カイルベルトのは純然たる北ドイツの味だ。時に外面の緊張力に不足する場合があるとはいえ、ひとたび乗ってくると凄まじい燃焼やゾッとするような迫力を見せる。
中略
そしてかなり速いフィナーレは冒頭こそやや軽いが、次第に調子が出て畳みこむような情熱の高揚を発揮し、オケの鳴り具合もじつにすばらしい。これは掘り出し物のような「第五」である。(「ぼくの選んだベートーヴェンの名盤」1982年より)

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クナッパーツブッシュ指揮ヘッセン放送管

ハンス・クナッパーツブッシュの芸術 with レジェンダリー・オーケストラ

音も良く、クナ節が全開、フルトヴェングラーのようには出来ない彼が、斜に構えて自分流を貫いた感はあるにせよ、説得力はかなりあると思う。(「ベートーヴェン不滅の音楽を聴く」2013年より)
これは凄い演奏です。ぜひ聴いてください。

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クレンペラー指揮ウィーン・フィル(1968年5月26日)

クレンペラー・コンダクツ・ウィーン・フィル

格調の高い古典の演奏なのに、もの凄い重量感があり、味の濃さがあり、訴えがある。第一楽章のテンポは遅いが、オーボエのカデンツァは特別に遅い。第2楽章も老大家の音楽で、深々とした佇まいと厚いハーモニーの中に凄い情熱がかくされている。(「ベートーヴェン不滅の音楽を聴く」2013年より)

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チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル

ベートーヴェン:交響曲 第4番&第5番「運命」 セルジュ・チェリビダッケ

テンポはゆっくりで、クレンペラーよりも細部が面白く、堪能させてくれる。とくに展開部は息もつかせない。強弱が完全に自由だからだ。(第一楽章の)コーダなど、fがmfになったりmpになったり。(「ベートーヴェン不滅の音楽を聴く」2013年より)

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バーンスタイン指揮ウィーン・フィル

ベートーヴェン:交響曲全集 レナード・バーンスタイン  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタインは最初の二つの楽章が見事だ。第一楽章は力みのない有機的な響きが意味深く、遅めのテンポが立派な佇まいを見せる。
第二楽章はテーマの、まるでバーンスタイン自身が弾いているような自在な強弱のゆれにおどろかされるが、こういうていねいな強弱は木管の長い持続音にも見られ、細部まで音楽に血肉をあたえてゆくバーンスタインの姿がある。(「ぼくの選んだベートーヴェンの名盤」1982年より)

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フリッチャイ指揮ベルリン・フィル

ベートーヴェン: 交響曲第5番《運命》・第7番 フェレンツ・フリッチャイ  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

フリッチャイは極めて遅いテンポで悠々迫らず、大らかに、ムキならず、しかし底にうねるような情熱を湛えた名演だ。(「ぼくの選んだベートーヴェンの名盤」1982年より)

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モントゥー指揮ロンドン響

ベートーヴェン: 交響曲全集・序曲集, 第九リハーサル付 ピエール・モントゥー  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団  ロンドン交響楽団

全曲は速いテンポで健康的に、一気に進められる。響きやリズムもパリッと冴えているが、皮相なところはまったくない。
あっさりとしてしかもこくのある、シューリヒト・スタイルによるベートーヴェンということができよう。(「ぼくの選んだベートーヴェンの名盤」1982年より)

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ヨッフム指揮ロンドン響

ベートーヴェン: 交響曲全集, 序曲集 オイゲン・ヨッフム  ロンドン交響楽団

ヨッフムのはこの指揮者には珍しく自信と決意に漲っており、やはり第一楽章が優れている。アンサンブルやリズムが強靭で曖昧さをとどめていないのが良く、各パートの音型が自ら語り出す趣がある。(「ぼくの選んだベートーヴェンの名盤」1982年より)

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ラトル指揮ウィーン・フィル

ベートーヴェン:交響曲全集(デル・マール・エディション) サイモン・ラトル 、 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

第一楽章の主題提示は徒に急がず堂々たる姿だ。それ以外はスピードを増し、リズムは生き、メリハリが立ち、まさに若武者の進軍、粗さはどこにもなく、すばらしいアンサンブルと生々しいひびきが一貫する。(「ベートーヴェン不滅の音楽を聴く」2013年より)

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ワルター指揮コロンビア響

ベートーヴェン:交響曲第4番・第5番「運命」 ブルーノ・ワルター 、 コロンビア交響楽団

ワルター盤は第三楽章までは優に◎に価しよう。その美しさは無類といっても良いほどである。(「ぼくの選んだベートーヴェンの名盤」1982年より)

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宇野功芳の芸術

運営者

1957年、富山市生まれ。小学生の時、NHK交響楽団を指揮する岩城宏之氏を観てから、クラシック音楽に興味をもち、今日まできました。
現在、LP、CD、カセットテープを含めて約1000枚を所有しています。
好きな作曲家は、ベートーヴェン、ブルックナー、ブラームスと硬派。
宇野功芳氏の評論には、中学生時代から接してきてその歯に衣着せぬ批評には大いに影響されました。
宇野氏を偲び、敬愛を込めてこのサイトを作っていきます。

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